現在、認知症の高齢者が急増しています。
患者やその家族をどの様に支えてゆくのか?
社会に突き付けられた最も大きな課題の一つである。
国は、一昨年から「伴走型支援」という新たな取り組みを始めた。
認知症の患者に初期のころから寄り添い、長く並走しながら支援をしてゆくという極めて重要な対策です。
しかし、始まったのはまだほんの一部の地域に留まっているのが現状である
どうすれば支援を拡大できるのか?・・・考える時期に来ています。
認知症は誰もが鳴りうる病気です
高齢化が進む中、急速に増加しています。
(認知症将来推計)
2012年・・・462万人
2020年・・・631万人
2025年・・・730万人
2030年・・・830万人
(厚生労働省研究班 2014年推計 各年齢の認知症有病率が上昇する場合)引用
2025年には65歳以上のおよそ2割、
つまり、高齢者の5人に一人の割合となります。
その後も増え続けるとみられています。
認知症は、本人や家族の生活に大きな影響を与えます
個人では解決できない問題も生じます・・・
だからこそ社会が支えてゆく仕組みが必要です。
・・・課題:初期段階の支援が課題・・・
特に今課題にされているのが初期段階の支援です。
この初期には、まだ認知症と診断されていない時期も含みます。
例えば、
・物忘れが多くなる
・会話がかみ合わない ⇒ 初期に支援へ結びつくケースは少ない現状
・理解、判断力の低下
⇓
その後、症状が重度化して支援や介護に結びつく
その時には、本人も家族も疲弊する。
*これは初期の支援体制がまだ十分でない表れです
⇓
相談窓口として・・・地域包括支援センターなどがありますが、そこでは認知症以外
介護や子供のいる家庭の支援など対象が多岐に渡ります。
相談料が大幅に増えていて、認知症初期の人まで十分に対応
仕切れていないところも出てきている。
新たな相談窓口や支援体制が必要になっています。
そこで国は2022年から「伴走型支援事業」という取り組みを始めた
それは、初期の段階から支援に入り、長く支えてゆく「伴走型」の取り組みである
事業を担うのは認知症患者を受け入れているグループホームをはじめとした介護事業所などが実施
医療や介護に未だつながっていない段階から支援に入る
その内容は…
・日常での悩みごとの相談
・生活面でのサポート
以上のように、早期に支援することで本人や家族の負担を軽減し、症状の安定にもつながる場合もあります。
そして、継続的に支援することで症状の悪化にも素早く対応することができます。
具体的な伴走型支援事業とは?
認知症グループホームがある
そこには多くの電話相談が寄せられている
(主な相談内容)
・本人が病院に行くのを嫌がる
・外出して迷子になる
・運転免許返納の説得 ・・・など 担当者は電話相談にのっている
⇓
必要に応じて自宅訪問(アウトリーチ)し、外出時に一緒についてゆき迷いやすい場所を確認したり、地域の見守りネットワークに登録したりします。
そして・・・症状が悪化すれば医療や介護の専門機関に繋げてゆきます
・・・伴走型支援の課題・・・
この伴走型支援は認知症の人が急増する中で極めて重要な取り組みですが、
大きな課題がある・・・
それは、まだほんの一部の地域でしか始められていないということです
全国でも数カ所にとどまっている状況です
手をあげる事業所がなかなか出てこないためです。
原因の多くが職員不足で支援に人を割けないのです。
ギリギリの中で人手をやりくりしてゆかなければならないのです。
伴走型支援を拡大するには・・・
多くの介護事業者がギリギリの人手の中で本業を行っているため、
伴走型支援を行う職員を新たに確保しなければなりませんが、
事業の委託費 152万円/年(国+自治体)
これでは職員一人も雇うことができません
委託費の引き上げを早急に検討すべきである
一方で、介護事業者側もどうすれば伴走型支援を始められるか?
様々な手段を検討してゆかねばならない
特にグループホームは地域に根差した施設を期待されている
しかし・・・
「人がいないからうちは無理」とすぐに諦めず
⇓
自治体などと相談し、どんな支援があれば事業を行えるのか?
1つの事業所では無理でも、他の事業所と共同で事業展開を検討する等、あらゆる方法を考えて可能性を探ってゆく事もできるのではないだろうか
こうして地域に住む人たちにも広く専門性を発揮してほしいと思います。
伴走型支援事業に限らず、他の事業でも早急に拡大してゆかねばならない
しかし、まだ道半ばなのが実情である
⇓
そこで考えるのは・・・地域に居る人材を生かし切れていないのでは?
例えば
認知症サポーター
養成講座を受け、一定の知識を持つ人がなり、全国で1300人超います
⇓
この人材を地域活動に繋げてゆく必要があります
サポーターを作っただけで終わっていないか?
国や自治体はサポーターチームを組み(チームオレンジ)生活面を支援
2025年までに全市区町村に整備する計画である
*実際には130ヵ所あまり(2020年実績)全体の10%弱である
コロナ禍で活動しにくい面が原因と考えられる
一人でも多くの力を集めて支援の輪を広げてほしいですし、それを主導するのは国や自治体の役割です。リーダーシップを今以上に発揮し、地域の人材をまとめ、
具体的な活動に結び付けてもらいたい
「認知症の人や家族が希望をもって暮らせる社会を実現する」(国が掲げたスローガン)
しかし・・・充分な支援体制が構築されているとは言えない
支援に当たる職員を増やし、
認知症サポーターの力を結集して、
社会が患者を支えてゆく
その仕組みを早急に整えてゆく必要があります。
著者:株式会社チーム・プロジェクト 笠原玄一郎
投稿者プロフィール
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・公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会
認定登録 医業経営コンサルタント
・BCP(事業継続政策)研究会所属
・病院組織改革研究会所属
・働き方改革改善
・増患及び集患に伴うマーケテイング分析
・診療圏、患者分析(用地診断・科目選定・用地開発)
・開業、法人化に伴うマネージメント
・施設建設に伴うマネージメント
・歯科経営(自費収入強化・訪問歯科推進・開業支援マーケテイング)
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